書評:OSSライセンスの教科書

著者:Ryosuke Tajima

書評:OSSライセンスの教科書

オープンソース・ソフトウェアは怖い?

ROSはオープンソース・ソフトウェア(OSS)です.OSSは1990年代後半から2000年台前半にかけて,LinuxやApache, Java, Androidといったソフトウェアプロジェクトの隆盛とともに一般化してきました.現在では,OSS無しのソフトウェア開発など考えられない,というのが情報産業では常識です.

しかし,ロボットの分野はハードウェアが主体を占めるためか,それほどオープンソースと縁のない開発をしてきていることがあります.そのため,OSSについて必ずしも正しく理解されていないようです.よくある誤解として,

  • ROSを使うと自分たちのソフトウェアも公開しなければならないから怖い
  • ROSやOSSは「そのへんに落ちて」いて無料で使えるので安くあがるはずだ
  • ROSは学生が書いてたりするのでコードの品質が低い
  • バグや不具合があったら誰が責任をとってくれるのか

といったものがあります.どれも私たちが実際に聞いたことがある意見で,そのたびに「そんなことはないんですよー」と説明はしますが,なかなか理解してもらえないことがしばしばで,大きな悩みの種でもあります.

この本を読めば,怖くない!

OSSライセンスの教科書

最近発売されたこの「OSSライセンスの教科書」は,それらの誤解を完全に解いてくれます.非常にわかりやすく,平易な文章で綴られていて,ソフトウェアを書いたことのない方,ライセンスの条文に馴染みがない方も理解しやすいようになっています.

第一部「基本編:OSSとOSSライセンス」では,代表的なOSSライセンス(GPLv2, GPLv3, MIT, BSD, Apacheライセンスなど)を解説しています.ただ単に個別のライセンスの解説に留まるのではなく,ライセンサーの「思い」や歴史的経緯の説明があり,「なぜこんなライセンスが必要なのだろう」という疑問に答えてくれます.

第二部「実務編:ソフトウェア開発とOSS」では,実際の業務でOSSをどのように取り扱うべきかという点に焦点をおいています.知的財産(特許)とOSSの関係という,実務上で非常に大事な点についても解説されています.

第三部「戦略編:OSSイノベーション戦略」は特に注目です.OSSライセンスにとどまらず,OSSをどういう場面で使うべきか,OSSやコミュニティに関わるということはどういうことなのか,その対局にある「フリーライダー」とは何なのか,といった話題を扱っています.当然ですがどれもROSとまったく共通の話題で,私たちTORKが日々理解してもらおうと努力している部分でもあります.

読もう!

この本のおかげで,これから私たちはただ,「あなた,それは誤解ですからとりあえずこの本を読んでください」と言えば良くなりました.まさに教科書,バイブルと言えましょう.よくぞ書いてくれました!

技術に携わる全ての人が(それにマネージャや経営者も!)読むべき本であると断言できます.まずは読んでみてください.

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