ルンバ 900 シリーズを ROS で遠隔操作ロボットに – USB 有線操縦編

著者:yamamoto.yosuke

ルンバ 900 シリーズを ROS で遠隔操作ロボットに – USB 有線操縦編

iRobot 社のお掃除ロボット「ルンバ(Roomba)」は 700 シリーズ以前のモデルでは mini-DIN のインターフェースポートがありシリアル通信にて外部からルンバを操作するためのインタフェース Roomba Open Interface (ROI) が提供されていました.またルンバ 900 シリーズではシリアルポートが micro USB となり USB ケーブル経由で外部コンピュータと簡単につなげて ROI が利用できるようになっていました.

そしてルンバから派生した掃除機能を廃して趣味や教育用をターゲットとした Create ロボットもルンバと共通の ROI で操作可能です.なおかつ Create 向けとして ROI の ROS インタフェースが GitHub で提供されているので この ROI-ROS インタフェースを用いることでシリアルポートの付いているルンバを ROS から操作することが可能となっています.

本シリーズの記事では PC やラズパイから USB ケーブルで 900 シリーズのルンバに接続して ROS からルンバを操縦する方法を紹介します.

記事のシリーズ構成は次のようになる予定です.

  • ルンバを Ubuntu PC から ROS を使って USB 有線操縦する(→本記事)
  • ルンバを Raspberry Pi に接続して ROS を使って WiFi 経由で無線遠隔操作ロボットにする(→次回記事)

実行環境

ルンバを Ubuntu PC から ROS を使って USB 有線操縦することを目的とした今回の記事におけるハードウェア・ソフトウェア構成は以下のようになっています.

  • ルンバ 961
  • micro USB ケーブル
  • PC: Dell Inspiron 13 5390
  • OS 等: Ubuntu 24.04 + ROS Jazzy (ROS2)
  • コントローラ(どちらか1つ)
    • Xbox360 互換ゲームパッド( 8bitDo SN30 pro – USB 有線 )
    • 3Dマウス( 3DConnexion SpaceMouse Wireless を有線で使用 )
  • 使用コード: https://github.com/y-yosuke/create_robot/tree/humble-add-setmode

OS などの環境については本記事執筆直近の動作検証では Ubuntu 24.04 と ROS Jazzy (ROS2) の組み合わせで行っていますが,過去に行った検証では Ubuntu 22.04 + ROS Humble の組み合わせでも動作確認しています.

使用コードについては今回のシステム構成において使いやすいように Create Robot のソフトウェア GitHub リポジトリ https://github.com/AutonomyLab/create_robot から
フォーク https://github.com/y-yosuke/create_robot/tree/humble-add-setmode して利用しています.

インストール・ビルド

Ubuntu 24.04 に ROS Jazzy のインストールする手順は下記リンク先の ROS 2 Documentation: Jazzy – Installation Ubuntu (deb packages) を参照して実行してください.

依存パッケージをインストールできるように rosdep をセットアップしておきます.

$ sudo apt install python3-rosdep
$ sudo rosdep init
$ rosdep update

ビルドのために colcon 関連パッケージをインストールします.

$ sudo apt install python3-colcon-common-extensions

ROS ワークスペースを作成して GitHub からコードをクローンし,インストール・ビルドを実行します.

$ source /opt/ros/jazzy/setup.bash
$ mkdir -p ~/roomba_ws/src
$ cd ~/roomba_ws/src/
$ git clone -b humble-add-setmode https://github.com/y-yosuke/create_robot.git
$ git clone https://github.com/AutonomyLab/libcreate.git
$ gnome-text-editor ~/roomba_ws/src/libcreate/include/create/packet.h
$ cd ~/roomba_ws/
$ rosdep install -r -y --from-paths src --ignore-src
$ colcon build
$ source ~/roomba_ws/install/setup.bash

2024.09.20 追記

上記手順の libcreate を git clone したあとに下記コマンドを追加しています.

$ gnome-text-editor ~/roomba_ws/src/libcreate/include/create/packet.h

本コマンドを実行するとテキストエディタが起動して修正が必要なファイル packet.h が開かれます.

下のように packet.h の 35行目 に #include <string> を挿入してファイルを保存してからテキストエディタを閉じます.

libcreate / include / create / packet.h

#define CREATE_PACKET_H

#include <mutex>
#include <string>

namespace create {
  class Packet {

これはビルドするのに必要な下記リンク先の修正のプルリクエストがまだ反映されていないための修正作業です.今後このプルリクエストが libcreate の master ブランチにマージされた後は不要となります.

ルンバの USB 有線操縦

ハードウェアのセットアップ

Ubuntu PC のソフトウェアのセットアップが終了したら Ubuntu PC にルンバとゲームパッドもしくは 3D マウスを接続します.

Ubuntu PC + ゲームパッド <==(USBケーブル)==> ルンバ 900シリーズ

ルンバ 900 シリーズの micro USB ソケットは上面右側にある細長いカバーを外すとあります.このカバーは工具なしで手で外すことができます.

デバイスの権限設定

ルンバが接続されているシリアルポートの権限を変更してユーザからもアクセス可能な状態にします.

$ sudo chmod a+rw /dev/ttyACM0
$ sudo usermod -a -G dialout $USER

ソフトウェアの実行

ターミナル 1

$ source ~/roomba_ws/install/setup.bash
$ ros2 launch create_bringup create_1.launch

launch 後,正常に Ubuntu PC からルンバに通信が確立されているとルンバ側で短いビープ音が鳴ります.

ターミナル 2

ルンバへの速度指令を出すためのゲームパッドもしくは 3D マウスのノードを実行するためにターミナルをもう1つ開いて実行します.

< Xbox360 互換ゲームパッド使用の場合 >

Xbox360 互換ゲームパッドを用いてルンバに対する速度指令を出すノードを実行するのに joy_teleop.launch を起動します.

$ source ~/roomba_ws/install/setup.bash
$ ros2 launch create_bringup joy_teleop.launch
注)デッドマンスイッチ(現設定 L1 ボタン) を押しながらアナログスティック R を操作

< 3Dマウス( 3DConnexion SpaceMouse Wireless )使用の場合 >

3DConnexion SpaceMouse を用いてルンバに対する速度指令を出すノードを実行するのに spacenav_telelop.launch を起動します.

$ source ~/roomba_ws/install/setup.bash
$ ros2 launch create_bringup spacenav_teleop.launch 

spacenav_teleop.launch においてはデッドマン・スイッチの設定はないので SpaceMouse の前後・ヨー軸のねじり入力がそのままルンバへの速度指令として出力されます.

次の動画はゲームパットを用いてルンバを動かしたときのものです.デッドマン・スイッチの L1 を押しながらアナログスティック R を操作することでルンバへの速度指令が出力されている様子が見て取れるかと思います.

ルンバ操作を終了するときは各ターミナルで実行しているプロセスを Ctrl+C で終了してください.

今回の記事はここまでです.


本シリーズ次回の記事ではルンバが動きやすいようにバッテリー駆動のラズベリーパイをルンバと USB 接続し,カメラも併せてラズパイに接続することで,ルンバ 900 シリーズを WiFi を介した ROS 遠隔操作ロボットのようにしてみる様子を紹介する予定です.

SwitchBot を ROS から利用する – データ取得編
ルンバ 900 シリーズを ROS で遠隔操作ロボットに - 遠隔操縦編

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